最初のやつ↓
北海道を自転車で一周した話〜準備編〜 - 雑多な日記
知床峠
8月14日、6時過ぎに目が覚めた。夜中は雨が降っていたようだが何とか止んでくれている。 まだ周りには寝ている人もいる。 なるべく音をたてないようにしてテントを撤収して、出発の準備をした。 すぐ近くのセイコマで朝食をとる。 チャリサーらしき集団と遭遇した。 特に何をされたというわけではないが嫌いだ。 ぼっちは無条件に集団を敵視するものである。
今日のメインイベントは知床峠だ。
ひたすら登る。
チャリサーの集団はちぎってきた。
ざまあみろ。
前日に会ったチャリダーの話がよみがえる。
「あいつら50km/hで走りよるらしいんで、もし遭ったら下り方向に反転して全力で踏んでワンチャンっすね」
「あそこ3頭おって内2頭は親子らしいんすよね。単体やったらちょっかい出さん限りそうそう近寄ってこんのですけど、親子の間に入っちゃったら親の方が全力で敵を排除しに来るんで、ジエンドっすね」
シャレにならん。
チャリはエンジン音が鳴らない。
なんとか音を出して己の存在をアピールしなくてはならない。
しかし、斜度はそこまでとはいえ峠を登っているのだ。
小野田君走法(*1)は妖怪の肺活量があってこそできること。
人間らしくスマホを取り出し、THE IDOLM@STER MILIONSTARS SP@RKLEを流す。
知床峠においても布教活動を怠らないプロデューサーの鑑である。
熊くん、君のプロデュースを見せてくれ。
もう半分を超えただろうか。
右足で踏む。喘ぐ。左足で踏む。喘ぐ。右足で踏む。誰に向けてだろうか、ふざけんなバーカと悪態をつく。この旅を計画したバカはお前だ。
すれ違うライダーのヤエーに反応する力しか残っていない。
やえー。
坂が緩やかになり、あたりを見渡すとなにやら荘厳な感じになっていた。
何やら神々しい雰囲気とは反対に人間の気配もしてきたので奇声を発するのも控えめに。
着いた。
ただただ気持ちがよかった。 射精の何倍も気持ちがいいせぇ!!! と叫びたい気持ちだった。 頂上の駐車場には何台もの車が停められ、中から人間が吐き出されていた。 チャリンコと自分の力で知床峠を登ってきたんだ、という達成感に震えながら息を整える。 ふと目をやると羅臼岳の頂が見え...そうで見えなかった。 雲だか霧だかが濃い。 違う方向へと目をやると択捉島らしきものも見えた。 しばらく粘って雲だか霧だかの隙間からチラチラと除く羅臼岳の頂を眺めた後、下り始めた。
が、これがめちゃくちゃ怖い。
これまで登ってきたウトロ側に比べて、羅臼側は勾配が急でカーブもきつい。
必死にブレーキを握り、減速をかます。
そんな激坂をモリモリ登っていくチャリダーたちともすれ違うが、手を上げて挨拶する余裕もない。
片手を離したら死にそうだった。
ブレーキシューと精神をすり減らしながら下っていくと熊の湯という看板が見えた。
こんなところに露天風呂があるのだ。
しかも無料である。
覗くだけ覗いてまた降り始めた。
悪天候と悪路
今回は納沙布岬はスルーすることにしていた。
理由のひとつはここを通ると予備日が消え、何か一つのトラブル小樽に戻れなくなること。
そしてもうひとつはこの辺りはかなり補給できる場所が限られると言う話を聞いたからだ。
宿泊地にも結構困る。
連日の雨でキャンプ泊はもう辛いなという思いもあって、ネカフェが利用できるであろう、釧路帯広あたりを経由して富良野へ向かうことにしてあった。
知床峠を下りきって、羅臼で右に折れて南下を始めた。
しばらくは海沿いで気持ちが良かったが、釧路方面へとハンドルを切らなくてはならない。
何故か標津に入る直前で、訳のわからないルートで迷いながら中標津へと向かう。
ここからはしばらく海沿いの道とはお別れである。
この辺りでまた雨が降ってきた。
余裕があればかの有名な開陽台も寄ろうかと考えていたが萎えてしまった。
びしょ濡れになりながらひたすら漕ぐ。
道も悪く、所々に穴が空いているのも神経を使う。
中には水溜りが道の穴を隠しているものもあった。
慎重に避けていたが、中標津町内に差し掛かったあたりでついにやられた。
水溜りの中にあった30cm程ある穴に前輪後輪と順に落ちたのだ。
よく転ばなかったものだと思えるほどの衝撃があり、半ば諦めながらタイヤを触ると前後輪共にパンクしていた。
最悪の気分でチャリを転がして近くの屋根を借りてチューブ交換した。
程なくしてこの日のキャンプ地である緑ヶ丘森林公園へは16時頃に到着した。
やや勢いの弱まった雨の中設営を済ませて、銭湯とコインランドリーへと向かった。 用事が済んだらやることはヤケ酒である。 帆立の貝ひもを肴にしてビールとストゼロをキメて20時頃には眠りについた。
リザルト
- 走行距離: 106km
- 獲得標高: 1430m
- 出費: 2,586円
*1)小野田君走法: 漫画「弱虫ペダル」の主人公である小野田君が、得意としているヒルクライムで「ヒーメヒメ♪」と歌いながら妖怪じみたケイデンスでライバルたちを抜き去る走法のことである
おわり